原題: FULL METAL JACKET
製作年度: 1987年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 116分
監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
製作総指揮:ヤン・ハーラン
原作:グスタフ・ハスフォード
脚本:スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
撮影:ダグラス・ミルサム
音楽:アビゲイル・ミード
出演:マシュー・モディーン、アダム・ボールドウィン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ、ドリアン・ヘアウッド、アーリス・ハワード、ケヴィン・メイジャー・ハワード、エド・オロス、ジョン・テリー
オススメ度:★★★★☆
ストーリー:
徴兵された若者が、次第に戦闘マシーンとして人間性を失っていく様を冷徹な視点で描く。
コメント:
ラストシーンでミッキーマウスマーチを歌いながら戦場を歩く軍人の姿…。
僕が本作で一番衝撃を受けたシーンだ。
一体この異色な光景は何を意味しているのだろうか?
しばらく考えてみたけどわからなかった。
とにかく戦争というものは、全てが狂ってしまって不均衡な世界になってしまっている状況だということを表現したかったのだと思う。このシーンを見た瞬間、こんな光景を作り出してしまったキューブリックそのものが狂気であるということを痛感してしまったのだ。今まで観た戦争映画にはない、キューブリックらしいねじれた狂気が浮き彫りになっている作品だと言える。
前半で描かれる海兵隊の訓練キャンプ。鬼教官・ハートマン軍曹による個人の人間性の否定や剥奪も辞さない徹底的な精神教育、および過酷な訓練による人間の兵器化はなんとも恐ろしい。またハートマンの口から発せられる罵詈雑言の数々からは異常な空気が感じられる。おそらくこのようなシーンが連続する地点で、本作に見切りをつけてしまう鑑賞者も少なくはないはずだ。だが僕にとっては、この狂ったようなセリフがあったからこそ、作品の重さを感じることができたのだと思う。
特に前半部でハートマンにシゴキ抜かれた気の弱い青年が精神を崩壊させ、軍曹を射殺するシーンは圧巻である。尋常ではない環境で訓練を受ける青年が狂気に落ちていく姿がリアルに描かれているのである。
後半で描かれるベトナムでの戦争風景。まず驚いたのが、セットのリアルさである。一体どうやって撮影を行なったのか?廃墟と化した街の風景があまりにもリアル過ぎてどこからどこまでが本物なのかわからない。もしかしたらほとんどが本物を使って撮影したのではないかと疑ってしまうくらい、戦場の雰囲気が完璧に表現されている。
最後に青年たちを襲った狙撃手の正体、それはなんとたった一人の少女だったという衝撃の事実。こんな少女相手に仲間を3人も殺され、そして最後にはその少女をも殺してしまう。
戦争とは一体何なのか?
その答えははっきりわからないが、この無駄な殺しの連鎖、そして狂った世界観を、キューブリックなりに見事に表現した作品であるように感じた。
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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画
- 2007/12/31(月) 11:15:24|
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